Vol.59 洋画で世界的に活躍 渡辺賢治さん(愛知県)

  遠州灘を一望する愛知県田原市で、大羽理容館を経営する渡辺賢治さんは、洋画の分野も活躍している。

  昨年の12月、フランスのルーヴル美術館が認定するトップアーティスト58,693人の中から「世界的名作遺産作家」128名に渡辺さんが選ばれた。専業画家や美大の教員がひしめく中、理容師として、誰にも絵画を教わったことのない渡辺さんが芸術の本場で評価を受けることとなった。

  少年時代からスケッチが好きで、電車で出かけては風景をスケッチする日々を送った。中学を卒業すると同時に理容の道に進むが、友人が油絵を始めたことに刺激され、自身も洋画制作に没頭した。

  渡辺さんの作品が注目され始めたのは40代に入ってから。ミレー友好協会日本支局の開設に携わった経緯から、フランスで作品が展示されるようになり、次第にヨーロッパ諸国でも評価を受け始め、ウィーンのハプスブルクの宮廷特別名誉作家に任命されるまでになった。

店内には渡辺さんの作品が並ぶ
世界的名作遺産に選ばれた「打瀬」

  渡辺さんの絵画の特徴は「光と影」にある。光が射し込む角度と水面などにできる影の位置を頭に入れ、しっかりと描きこむ。また、「絵の中の一つひとつに私のメッセージが込められています。絵を観た人がメッセージに気づき、指摘してくれると嬉しいですね」と渡辺さんは語る。

   数多くの展覧会の中でも、昨年の東日本大震災を受けてフランスで行われたチャリティーイベントが強く印象に残っているという。自身の絵画がプリントされたワインが販売されることによって、被災地の復興に貢献できたことがその理由だ。渡辺さんも中学生の頃に伊勢湾台風で被災しており、周囲の人々に助けられた経験から、自分も被災者の力になりたいと思ったのだという。

  地元の住民や学生にも絵画の指導を行っているという渡辺さん。これからも、地域との交流を大事にしていきたいと語った。

(理楽TIMES H24.7.1付けNo.442掲載)

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