Vol.20 櫛や簪を供養する 安井金比羅宮(京都府京都市)

 

お話を伺った宮司の鳥居肇さん

 崇徳天皇(すとくてんのう)をお祀りし、男女の縁、病気、酒、煙草、賭事など、全ての悪縁を切る断ち物の祈願所として、また、良縁を結ぶ神社として信仰されている安井金毘羅宮では、毎年9月の第4月曜日に、「櫛まつり」というお祭りが行われている。
 もともと櫛や美容といったものには関わりがなかった同宮だが、50年前に氏子の美容家から「使い古した櫛などをなんとかできないか」と先代の宮司に相談があり、櫛などを供養する「櫛まつり」が行われるようになった。翌年には第久志塚が建立され、「櫛まつり」では奉納舞、風俗解説、時代風俗行列が行われるようになり、以来、現代まで毎年続けられている。
 この行列は、古墳時代から現代舞妓までの各時代の女性の風俗行列で、当時の装束や衣装をつけ、かつらを使わず地毛で結いあげた髪型をした女性が同宮から祇園を練り歩くもの。風俗研究家の吉川観方先生の時代監修、衣装は和装の会社から借りるなど、多くの美容家の協力によって行われ、現在は京都府の美容師会が中心となった「櫛まつり実行委員会」が運営している。
 最近は、参拝客が思い入れのある櫛やかんざしを供養してほしいと同宮に持ってくることもあるそうで、預かった櫛やかんざしはまつりのときに一緒に供養しているという。

櫛まつりの様子

 「久志塚の漢字は当時つけられた当て字だと思うが、久しく志すという気持ちを大切にしていきたい」と鳥居肇宮司。
 清水寺など、神社仏閣の多い東山に位置する同宮、一度訪れてみてはいかがだろうか。

 

 

 

 

 

同宮の北側に位置する久志塚

●安井金比羅宮

 住所/〒605-0823京都府京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70

 TEL/075(561)5127

交通/JR京都駅から市バス東山安井下車徒歩1分または京阪本線四条駅・阪急京都線河原町駅から市バス東山安井下車徒歩1分

 名神高速道京都東ICから約20分または名神高速道京都南ICから約30分(普通乗用車無料駐車場有り)

 

 

(『理楽TIMES』H22.6.1付No.417掲載)

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