Vol.19 天野文緒さん(東京都)~川柳という“ポエム”にこだわり続ける

82歳になった現在も川柳に対する熱い思いを持ち続ける天野文緒さん

 理容展望「柳壇」の選者を務める天野文緒さん(82歳。本名・文夫)は、明治時代開業の老舗理容店の3代目として、大正11年、東京・港区に生まれ、18歳のときに理容師免許を取得した。

   小さい頃から勉強が好きだったという天野さんは、大学にまで進学したが、卒業後は家業を継いだ。現在は、理容業を引退し、三田ステーションビルのオーナーとして活躍している。

 文芸の世界には、お客さまの薦めで俳句から入ったそうだが、後に川柳界の第一線で活躍していた理容師、大沢深雪、黒坂幸花の両氏(いずれも理容展望「柳壇」選者)に師事することに。その後は、作句の傍ら、江戸時代の川柳に関する文献を紐解くなど、その柳歴は45年にもおよぶ。

  身近な出来事、問題をテーマとし、人の心の機微をユーモア交えて表現する“ポエム”と、川柳を分析する天野さんは、「毎日、不特定多数のお客さまと接する皆さんにとって、川柳は比較的取り組みやすい環境にあります。上級者の句の作り方を参考に、気軽に楽しみながら川柳に挑戦してほしいですね」と、理容業界の“柳人”に対する思いを熱く語る。

  また、これから川柳に触れてみたい初心者の方には、「概して“説明句”になりやすいので、切り口、着眼点をよく考え、その上でひねりを効かせ、何かを訴えていくような気持ちで取り組めば…」と、アドバイスしてくれた。

 

(平成16年7月1日付け№346掲載)

Translate »