Vol.12 石川啄木の住んだ本郷喜之床はじめ 明治の建築物を保存・展示 愛知県犬山市 博物館明治村

 

博物館明治村の4丁目47番地に建つ本郷喜之床。2階から啄木(の写真パネル)が外を見ている

 博物館明治村は、近代建築の素地を築いた明治建築の建物の保存を図るために昭和40年に開村された。現在は60棟を超える歴史的、芸術的価値の高い建築物が保存・展示されている。
  それら貴重な文化財の一つとして保存されているのが「本郷喜之床」。昭和55年に東京・本郷から移築された。
  「街の風景の一つとして床屋さんは欠かせない施設ですから、全国で物件を探していたときに、道路拡張のために取り壊すところだった同店に巡り合ったのです」と当時を語るのは、移築を担当した西尾雅敏建築担当部長。
 創建から60年余、客商売の常もあって、いろいろ改装がなされ、店構えなどが現代風になっていたが、柱などに残る痕跡調査を基に、できる限りの復元を行った。
  喜之床は、新井喜之助が「喜多床」から独立して明治12年に開業した。ここに残るのは明治末期頃に改築したものとされているが、その名を現代まで残している要因の一つが、明治時代の歌人、石川啄木が明治42年6月16日から44年8月7日まで、この2階に住んでいたことだ。
  「寄贈いただいた建築物にたまたま啄木が住んでいたということですが、その事実によって喜之床の文化的価値がさらに高まっているとは言えるでしょう」と西尾部長は話す。
  その同部長の頭の中に、ある大きな構想があるという。この歴史的建築物を使って、実際に理容店として営業することだ。クリアしなければならない課題は多々あるので実現は容易ではないが、明治を現代に伝えるこの喜之床で、最新のヘアスタイルが提供される日が来ることを楽しみにしたい。

 

喜之床の移築を手がけた西尾雅敏建築担当部長

 ●博物館明治村

 住所/愛知県犬山市内山1番地

 ℡0568-67-0314

 交通/名鉄犬山駅からバス20分

     中央道小牧東ICから3km

 開村時間/9:30~17:00(11~2月は9:30~16:00)

  休村日/12月31日、12~2月の毎週月曜日

  入村料金/大人(18歳以上)     1,700円

       シニア(65歳以上) 1,300円

       高校生       1,000円

       小・中学生      600円

 

 

 

 

(『理楽TIMES』H.20.8.1付No.395掲載)

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