Vol.10 かもじ・かつらのパイオニア 髪の祖神・蝉丸を祀る神社 東京都北区 関神社

 

 理容業祖は藤原采女亮だが、髪の祖神・蝉丸のことは、ご存知だろうか。
 蝉丸は、延喜帝(第60代天皇・平安時代)の第四皇子で、小倉百人一首にも選ばれた歌人だが、髪が逆髪で嘆き悲しむ姉のために「かもじ」を考案し、髪を整える工夫をしたことから、日本の「かもじ・かつら」のパイオニアとして「音曲諸芸道の神」「髪の祖神」と呼ばれ崇敬を集めている。 
 蝉丸を祀る場所としては、滋賀県大津市の「関蝉丸神社」が有名だが、東京都北区の王子神社境内にある関神社もまた髪の祖神・蝉丸を祀る神社で、王子神社の八木光重宮司は「関神社は、王子神社に12あった摂社のひとつで、江戸時代に関蝉丸神社の御神徳を讃え、この地に蝉丸公をお祀りしようと、かもじ業者が中心となって勧進したことにはじまります。昭和20年4月13日に戦災で社殿が焼失しましたが、毛髪を取り扱う業者が奉賛会をつくり、昭和36年5月24日、これを再建しています。12あった摂社の中で再建されたのは、この関神社だけです」と、その信仰のあつさを語る。
  社殿のとなりには、お釈迦様が祇園精舎に入られた際、貧女が自らの髪の毛を切り、油にかえて光を献じたところ、どんな強風の中でも消えずに輝き続けたという伝説に基づき、髪の尊さへの感謝と供養の想いを込めて建立されたという「毛塚」もあり、髪への感謝を示すにはぴったりの場所となっている。
  「業者の方が参拝によくお越しくださいますが、付近には、飛鳥山公園、音無川親水公園、名主の滝公園があり、歴史探訪や、神社仏閣めぐりのグループも多いですよ」と語る八木宮司。散策もかねて毛髪の歴史に触れてみてはいかがだろうか。

髪の祖神・蝉丸を祀る関神社

●王子神社・関神社
 住 所 東京都北区王子本町1-1-12
 ℡ 03-3907-7808
交 通 JR京浜東北線・東京メトロ南北線「王子」・都電荒川線「王子駅前」より徒歩2分

 

 

(『理楽TIMES』H.20.5.1付No.392掲載)

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