「理容2017メッセージ」全国大会 
 ● 優 勝 作 品 ●

「高齢者の笑顔が見たくて! 私の訪問理容」
東北協議会代表 (岩手県)   瀬 川  香 織

 「髪を切ったら十歳位若く見えますね!
 また伸びた頃に来ますね。また今度!」
 
 これは、私とご利用者とのいつもの合言葉です。
 私が訪問理容に伺うきっかけになったのは、やはり懸命に訪問美容に取り組む美容師の友人に「美容師ではお顔剃りが出来ないから、理容師さんに行って欲しい」。そう言われたことでした。
 ある日、カットに時間がかかり過ぎてしまい、申し訳ない気持ちでご家族にお詫びすると、
 「丁寧に時間をかけて切ってくれるから、私達家族も嬉しいわ」
 という言葉が返ってきました。それは私が想像もしなかった驚きの言葉でした。手間がかからないヘアスタイルにする事や、体調に気遣い短時間でカットを終える事など、ご利用者の為を思いやってきた事は、ご利用者が求める事と大きな違いがあったのです。むしろ、普段サロンへ行く事が出来ないご利用者程、デザインの美しさにこだわりを持ち、私達理容師が髪や肌に触れる丁寧さをとても敏感に感じ取ります。一人一人真剣に向き合わなければ、心から満足していただく事など、到底出来なかったのです。
 
 この日を境に私の心の中で、訪問理容に対する考え方に大きな変革が始まりました。これまで以上に、ご利用者やご家族の生活に寄り添える仕事でなくてはならないと考えた私は、体調やご要望、禁忌事項などを事前に確認できるよう、サロン独自で作成した『訪問理容確認シート』の活用を徹底しました。担当のケアスタッフから専門的なアドバイスをもらい、事前に情報の把握と理解をすることで、体力のないご利用者には無理のないスムーズな仕事を、そしてあるご利用者には、カットやお顔剃りの時間が大切なリハビリの時間として活用されるようになりました。
 ケアスタッフとの連携が取れることで、今では末期癌や白血病、ALSの難病など重篤な現場への依頼も増えています。単にカットをするだけではなく、頭皮や毛髪の変化に気付き、健康や衛生を保つプロとして、ご利用者やご家族、ケアスタッフからも大きな信頼を頂いていると実感する事が出来ます。
 
 以前、長年訪問理容に取り組んでいる仲間が私に言った言葉があります。
 「訪問理容なんて、誰が行っても同じだよ。相手は来てくれるだけで嬉しいんだから」
 当時の私はその言葉に反論をする事が出来ませんでした。ですが、この訪問理容に勇気づけられ、心まで大きく成長する事が出来た私は、今はっきりと「それは違う!」と言う事が出来ます。
 
 私が働く訪問理容の現場は、髪を切り若々しくなったご利用者と、そこに寄り添うご家族の沢山の笑顔や笑い声であふれています。その笑顔のご利用者と私はいつもの合言葉で次回の訪問への約束をします。
 次もまた、笑顔があふれる訪問理容を目指して。「あなただから来て欲しい!」。そう言われる理容師を目指して。そして、高齢化社会を支える、貴重な仕事を担う理容師であることに限りない誇りを持ち、これからも私自身の変革は続いていきます。
 
 「次はお正月の前に来ますね! また今度!」