高橋信之(たかはし・のぶゆき)さん

1957年、茨城県生まれ。
83年、茨城県理容競技大会第2部門(レディスカットヘア)で優勝し、同年、関東甲信越理容競技大会第2部門で優勝。
88年、1988パリ国際理美容選手権大会で3位に入賞した。
97年には、心理学を取り入れたパリ式の理美容のメソッド“ヴィザジズム”の上級習得者に与えられる「ヴィザジスト トータル ルック フォルマター」を取得。
現在は、「cut house PICK-UP」を経営するほか、全理連中央講師、ヴィザジズム教育を進めるフランスFNCFの正会員などとして、技術者の育成に力を注いでいる。

高橋さんの後ろの絵は、小学6年生の娘さんが描いた。
「素晴らしい!」(池田さん)。
「作品として評価しているんです」(高橋さん)。
年を重ねるごとに色気が増す
大人の癒しのサロンを経営

池田 ものすごく素敵にドレスアップされていて、光栄でございます!
高橋 失礼のないように、と思いまして。ちょっと『LEON』気取っちゃいました(笑)。
池田 アハハハハハッ(笑)。素晴らしいですよ! 南フランスのような雰囲気で統一されたこの店と、信之さんの雰囲気がよく合っていて、絵になりますね。この店はどういう思いでつくられたんですか。
高橋 大人のための癒しのサロンというコンセプトで、10年前に改築しました。自分と同じように年を重ねて、色気を増していくような店をつくりたいと思ったんです。最近、面白いのが、子どものときに親御さんと一緒に来店されていた方が、25歳位になって「覚えていますか」と、また来てくれるんですよ。価値がわかる年代になって、改めて自分の意志で来店していただけているんです。“好きこそ物の上手なれ”という感じで、私は理容の仕事が好きだから、ここまで続けてこられました。
池田 僕も本当に仕事が好きなんですよ。昨日もある企業のトップの方ふたりに、3時間かかって、彼らのベストスタイルをコーディネートしたんです。まず最初の30分位は、彼らから仕事のことや奥さまとの過ごし方などについて話を聞きました。その後、数パターンのコーディネートを提案したんですが、トータルするとかなりの高額になりました。でも、彼らは喜んで買ってくれた。しかも、「コンサルタント料も取ってください」とまで言っていただけたんです。うれしかったですね。3時間やるとくたくたに疲れるんですけど、私も好きだからできるんです。
高橋 理容師もお客さまから「コンサルタント料を取ってください」と言っていただけるようになるべきだと思っています。そのためには、私も池田先生のように、お客さまをお迎えして最初に、お客さまの嗜好を理解しようとしているんですね。お客さまの手のしぐさ、あるいは洋服のシルエットや素材感などから嗜好を見抜いて、そのうえで自分の考えを織り交ぜながら、ヘアスタイルの提案をしています。
池田 「どんなヘアスタイルが好きですか」って、お客さまに聞いちゃダメですよね。
高橋 40歳のとき、世界的に有名なヘアデザイナーのクロード・ジュイヤール氏が、パリから来日して開いた講習会を受けたんです。ジュイヤール氏が提唱した“ヴィザジズム”という、心理学を活用した造形学の講習会です。目からうろこでした。「お客さまの要望は聞くのではなくて見抜くんだ」ということを教えていただいたんです。
池田 いい言葉だなぁ。僕も大学では心理学を専攻していて、心理学をファッションの仕事に活かしてます。接客は心理学ですよね。
高橋 日本人は同調行動に走りやすいじゃないですか。流行に流されやすいというか。でも、水面下の心理の部分では、流行とは違うものが好きだったりするんですよね。だから、マテリアル(素材感)やフォルムのバランスはお客さまから見抜いた嗜好のものにして、そこに流行を調味料風に加えると、お客さまが安心できるスタイルになりますね。