【近代理容業篇】

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 ちょん髷は豚の尻尾かピストルか〜外国との付き合いに邪魔だった〜

ちょん髷という日本古来のヘアスタイルは、外国人にはことに異様に映ったようで、「日本人はピッグテール(豚の尻尾)を頭に載せているようだ」とか「ピストルをのせているようだ」などと嘲られていたそうです。そこで、対等のつきあいをするには何としても不都合だと考えた為政者たちが、半強制的に国民に断髪を強いたのでした。
そこで、各地方自治体では、中央政府の意向を反映するために各府県布告を出してその意義を説きました。例えば、
「岩前縣(今の福島県)や石鉄縣(今の愛媛県)の万国交わりを厚うするに至り、荏苒野蠻の頭様を墨守、海外の嗤笑を取るの理なし、依て、決然頭髪を断裁し、以って方今、隆運の盛思を戴んことを、銘々相心得、速に剪除致すべきこと」
という布告は、如実に政府の意志を表した代表的なものです。もっとも、大阪府の布告のように、「断髪は頭部の保護と健康のためによい」という合理的な理由を説いたものもありました。
このように、苦心して民衆に断髪を強いる各府県の努力に先立って、政府は「散髪七徳の広告」という記事を出しています。
「散髪には七徳ある。その一つは経済的であるということだ。たとえば、結髪料金は一回わずかに二百文ではあるが、月に二十六度結髪すれば一年には十四貫四百文かかる。六歳から六十歳まで結髪するとして、五十五年間の料金は七百九十二貫、即ち六十三両一分と三銭かかる…。これを年一歩の利倍に見積もると、五十五年後には五千四百六十六両二分一朱と四銭三厘七毛で、まことに驚くべき金高となる。」(大坂新聞・明治6.1.20付け)
最初は、このようにもっぱら経済的な面が強調されていました。