令和2年度業界振興論文・優秀賞

 

2020年 コロナ後の新しい時代へ
≪理容師の新しい生き方の入口へ≫

糸田 泰典(和歌山県組合)

 

【序論】  

 令和2年、世界中の人たちが「新型コロナウイルス」の感染により、恐怖と大不況の奈落の底につきおとされました。
 まずは、この病原体により感染されました方々、命を亡くされた方々に心よりお見舞いお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈り申し上げます。 
 今年の2月初旬、新型コロナウイルス感染症が日本でも流行し始めましたが、当時は未だ、危機管理に乏しかったことを思い出します。
 しかし、それから二ヶ月足らずの間に、状況は激変し悪化の道をたどりました。
 ついには国から「緊急事態宣言」が発令され、全国的に自粛要請が出され国内の人の動きが止まってしまい、世間の風景・景色もかつて見たことのない状況に転じてしまい、日本国内の多くの人たちが新型コロナウイルスに対する考えが一変し、危機管理を徹底するようになりました。
 世界中の人たちが外出自粛を余儀なくされている間、私たちの住む地球上のCO2の排出量が軽減されたことにより、大気が浄化されあらゆる地域の景色が蘇ったように見え、コロナが総て悪いのではなく良いことももたらしてくれたように私は感じました。
 コロナウイルスの影響は、理容業界でも同様に被害を被ったお店も多くあったことを耳にします。
 ようやく外出の自粛も、徐々に緩和されてはいますが、未だ感染の恐怖に怯えながら、感染予防に徹底し営業を続けています。   
 しかし、何時までも怯えてばかりでは前に進めません。
  コロナは「流行」ではなく「時代」です。
 これからは、コロナウイルスと共存を続けこの経済の底辺から、これまでコロナウイルスとの闘いの中で学んだ事を糧にして、新しい理容師の生き方「新しい理容師としての成長・進化」を目指し、コロナウイルスに対応したガイドラインを作製して行かなければと考えています。     
 私たちが、この長く耐えしのいだトンネルの出口は、今までとは違う「コロナウイルスとの共存して行く新しい世界への入り口・時代」になるのです。 
 その新しい世界は、ニューノーマルな生活習慣を自らの英知で作り上げて行かなければならないのです。
 そこには、我々理容師がしなければならないことが沢山あります。     

【本論】

 まずは、大切なお客さまを守る為、安全で安心して来店して頂けるよう、消毒などの徹底に取り組むことが必要不可欠であります。
 次に、お客さまに安心して来店してもらうには、出来る限り、お店の混雑を避けることを心掛け、「ゆとりのある予約」に変更することが必要と考えます。
 従来の「売り上げ優先」から、大切なお客さまの安心・安全を優先に転換し、「ゆとりのある営業」に重点を置くように努めることが大前提としたうえで、「コロナウイルスとの共存して行く新しい世界」に向けての提案をさせていただきます。
 私はこの様な時こそ、組合に加盟しているスケールメリットを最大限に生かし、非加盟店や低料金店などに出来ないことで格差を作り、加盟店だからこそ出来る今までに無いクオリティーを高めることが必要な時だと考えます。   
 この窮地に陥った時こそ、組合の組織力を活用し、技術講習会・新接客サービスの講習会なども、今までとは違う「リモート講習会」に切り替えるなど、思い切った対策が必要です。
 「リモート講習会」に切り替えた際、まず、開始日時などを、各府県の事務局などに連絡をして全国で受講してもらえるように準備します。
 そして、東京の連合会本部で講習会を開催し、その模様を北海道から沖縄まで一斉送信すれば、全国の組合員が同時にリモート受講で技術を磨けるのではないでしょうか。
 これからは、コロナ時代に適応した、今までとは違うニューノーマルな生活に合った「新たな接遇サービス」も必要不可欠な時を迎えていることを提案します。
 コロナウイルスによってもたらされた時代の変化を、今私たちはしっかりと受け入れなければならない入り口に立たされているのです。 
 昨年までは、各地で、人を集め、技術講習会などを開催し、技術研磨に取り組んで来ました。
 先ほどからも指摘しているように、これからの時代は、今までとは違う、リモート講習会へと進化する時を迎えているのです。
 ニューヘアー等々の技術講習会は、今後も必要不可欠ですが、今、早急に取り組み学ばなければならないのは、衛生面も含めた新たな接客サービスの見直しです。
 これからは、長年来店して頂いているお客さまに、これまで以上のグレードアップした接客サービスの提供が必要だと考えます。
 今年に入って、コロナウイルス感染者が拡大し、国から外出自粛要請を余儀なくされ、あらゆる分野の業種・サービス業が総てダウンしてしまいました。
 その中でも全国的に有名な旅館・ホテル・一流レストラン・飛行機の搭乗乗務員・メディア関係者等々の誰もが、想像を絶する体験をされました。
 そして今、試行錯誤しながらも一生懸命立ち上がろうと頑張っています。   
 我々理容師も同様に、前を見つめ模索しながら、復興の道なかばといったところです。
 こんな時こそ、異業種のエキスパートらとコラボレーションを図り、新たなドアを開け前を向いて歩み出すことが必要な時期だと考えます。
 そこで、私は、人が集まっての講習会が出来るようになるまでの間、次のような「リモート講習会」の開催を提案致します。
 まず毎月、連合会が発行している理楽TⅠMESなどを利用して、リモートによる「技術講習会」・「新接遇マナー研修会」の必要性とリモート講習会についての告知をしてもらいます。
 「リモート新接客講習会」を数回程度に分けて実施し終了時にはテストなどを行い、合格者には「優良衛生接遇マナー受講店」などのマイスターカード(修了証書)の発行、店に掲げて頂くことで、お客さまには、より安心・安全を見える形で実感してもらえるようになると考えます。
 「リモート新接客マナー研修会」の内容は国内で卓越した異業種の優れたプロの人たちにご協力をいただき、連合会を通じて「新接遇マナー研修会」を開催することで、全国各地の幅広い年齢層の理容師に、安易に参加してもらう事が可能になります。
 尚、この「リモート新接客マナー研修会」は今だからこそ行う価値があり、非常に有効性が高い講習会になると私は確信しています。
 今回、新型コロナウイルスが蔓延したことにより、これまであまり目を向けることがなかった「接客マナー研修会」ですが、売り上げが減少し組合員の高齢化も進んだ今だからこそ、理容師の付加価値を高める意味でも、参加する意義があるのではないでしょうか。
 講習内容としては、プロのアナウンサーによる「話し方」のレッスンで、滑舌や、相手の心に伝わる「ことばのかけ方」などを学ぶことで、「何気なく」の会話ではなく、よりお客様に喜んでいただけるコミュニケーションが図れることが期待できます。
 これからの理容師には、理容の技術だけではなく、会話の力も必要な転換期が訪れています。
 この他、今回、未曾有の体験をされた異業種の方々から、私たちが、気がつかないお客さまへの「目に見える安心・安全の施策」を学ぶことも有効であると考えます。
 例えば、今立ち上がろうとしている有名旅館の女将などによる「新接客方法」や、今回の体験で学んだ、一流ホテルの「心のこもった新たな接客サービス」、また一流レストランのサービスの達人による「おもてなし」など幅広いサービス業の分野で、コロナから立ち上がり復活されようとする人たちから、その「英知」を学ぶことで、我々理容師も、今までとは異なる新たな接客サービスを提供出来るように努めようではありませんか。
 更に、このアクションは今、組合の脱退を考えている店主(組合員)にも、今一度考え直してもらえるきっかけを与え、組合員減少の歯止めになる可能性も充分あります。
 また、このような基盤構築が出来てくれば員外店からの再加入にもつながり、組織力の強化になる可能性も秘めています。
 私はこのような窮地の時こそ、組合に加盟しているスケールメリットを最大限に生かすことで、加盟店オリジナルのクオリティーをより高めることが必要だと考えます。     
 繰り返しますが、今まではひとつの場所に集まって「技術講習会」を開催することにウエイトを置いて来ましたが、これからは、今テレビでも毎日見かけるリモートを最大限に生かした「技術講習会」・「新接客マナー講習会」などを実施することが必要不可欠な時期に来ていると考え、前向きに検討されることを願います。

 【結論】   

 現在、全国理容生活衛生同業組合の加盟店数 は約46000店舗。
 今回の新型コロナウイルスによる影響は、理容業界だけでなく、世の中のほぼ全ての業種にとって、「未曽有の出来事」となっています。
 私は、30年間理容業を営んできたなかで理容師の丁寧で緻密な仕事は誰にも負けない誇りを持てる仕事であると確信しています。
 そして良き仕事には、必ず素晴らしいやりがいと達成感が付いてきます。   
 この仕事の素晴らしさを、もっと多くの人たちに知って頂きたいという私の思いは、どんな時も変わりはありません。
 そのためには、今までとは違った「新しい理容師のブランドイメージ」が必要だと考えます。     
 理容組合・60年の伝統と歴史は先輩たちが築き上げた大切な土台です。   
 「古きを温ねて新しきを知る」
 どの業種も高齢化が進み、新型コロナウイルスに脅かされて来た現在だからこそ、まず我々理容業界全体の新陳代謝を図って行こうではありませんか!
 そして、組合員全体の質の向上が「業界の活性化」となり、さらには、理容師の資質向上につながり、お客さまには、より安心・安全・快適なサービスの提供を、見える形でアピールすることが出来るようになると私は信じています。
 次に向かう全国理容生活衛生同業組合70周年が、新型コロナウイルスに負けない、より輝きに満ちた生命力溢れる理容業界であって欲しいとわたくしは願ってやみません。


 

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