規制改革への対応と今後の業界戦略

本提言書の構成

●前文

● 1.規制改革・垣根問題の動向
 (1) 垣根の低下を推進する力
 (2) 構造改革特区申請による規制緩和
 (3) 規制改革・民間開放推進会議による規制緩和

 ●2.短期的な業界戦略
 (1) 垣根を維持する(現行法の堅持)
 (2) 消費者ニーズに的確に応え、厳しい経営環境にも対応しうる業界を構築する
 (3) 組合が計画推進期間(基本的には4年)を明示した「意識改革と業態化推進計画」を策定し、業界内に徹底する
 (4) 組織への若手理容師・員外者の取り込みによる組織力強化

● 3.長期的な業界戦略
 (1) 長期的な業界戦略策定の必要性
 (2) 業務独占維持の論理=衛生・安全
 (3) 業務独占を問題視する動きへの対応

 

前文

 理容業界・美容業界の垣根問題や業務独占は規制改革の議論の中で、業界が適切に対応しなければ今後現状維持が難しくなる可能性もなしとしない。理容業界が今後この問題にどう対応して行くべきかは、理容業界の盛衰を決する業界戦略上最も重要な検討課題である。全国理容総合研究所は、この問題に関し、理容業界内部での議論を活発に行い、コンセンサスを得るために、この提言書で一つの考え方を提示するものである。

 

1. 規制改革・垣根問題の動向

(1)垣根の低下を推進する力

① 消費者ニーズ
  消費者から見ると、理容店・美容院のいずれを選択するかは自由である。しかし理容師・美容師の施術(技術)の区別が付かず、大半の理容店が美容院からの差別化を図れていない。これは理容師の施術が正当に評価されていないためであり、このため例えば若い男性が美容院に流れる現象が広く見られる。

② グローバルスタンダードを梃子てことした政府の圧力
   国は規制改革を行う場合、グローバルスタンダード(世界標準)を国内にも適用しようとすることが多い。欧米・アジアを含め、理容と美容は一体化している国が多く、外国と違う制度を維持するには正当な根拠が必要になる。

③ 理容・美容業界の大手の動向
   中堅以上の店舗では理容店で美容院と変わらないサービス内容・雰囲気の所が増えており、既に事実として垣根は低下しているとの見方もある。

④ 理容師数の減少と理容所の維持の困難化
   理容学校の入学者、国家試験合格者数の減少に伴い、理容師の確保難から全国の理容所の経営維持が難しくなり(従業員を雇用する店)、又は後継者が現れないという現象が顕著になっている。QBネットや日本フランチャイズチェーン協会の特区申請問題も同様の事情を背景にしている。この結果、現状を放置すれば理容所数が減少し、美容所数との格差が拡大することが予想される。

(2)構造改革特区申請による規制緩和
  QBネットや日本フランチャイズチェーン協会から申請された規制改革特区は、現時点では認定されていない。しかし、今後も理美容師混在等の申請は行われる可能性があり、予断を許さない。

(3)規制改革・民間開放推進会議による規制緩和
  理容・美容業界は規制緩和リストからはずされた。しかし、再び規制改革の要求が出てくる可能性がある。

 

2. 短期的な業界戦略

(1) 垣根を維持する(現行法の堅持)。
① 垣根を維持し、業務独占を守ることが消費者保護に資する(現行法維持)。
② 垣根を維持し、業務独占を守ることが理容店経営や業界全体を安定させる。
(参考)
業務独占= 資格が無ければその業務が行えないこと。資格が無い状態でその業務を行うと刑罰の対象となる。(例:理容師、医師、看護師)
名称独占= 資格が無くてもその業務が行えるが、資格が無ければその名称を名乗れないこと。(例:調理師、介護福祉士、社会福祉士)

(2) 消費者のニーズに的確に応え、厳しい経営環境にも対応しうる業界を構築する。そのためには、個々の店の経営を改善するための情報を提供する。

① 業態化経営―理容総研の経営セミナー等
② 理容技術・経営の見直し―理容総研のセミナー・シリーズ(シェービング、シャンプー、カット等)
③ 消費者向け理容業アピールのための戦略的展開―消費者に対する理容業の良さをアピールするための各店での説明(カットやシェービング技術など業務に伴うもの)、消費者を巻き込んだシンポジウムの開催などを行う。理容スポークスマン・理容通の養成、特徴あるアンテナ店、情報の確保等。

(3) 組合が計画推進期間(基本的には4年)を明示した「意識改革と業態化推進計画」を策定し、業界内に徹底する。
① 個店の自己変革―消費者ニーズが変化しても影響を受けない(経営出来る)状況を作る。
② 組合事業の自己変革―調整型、規制型から提案型、営業支援型、福利厚生型事業へ、また、組合員参画型事業、必要に応じた機構改革、行政との協働型(行政が推進する高齢・少子化対策等への協力)へのシフトを図る。
③ 県組合の研修体制拡充―全理連と連携し、組合員のための組合を目指して、講師育成等により意識改革と業態化推進のため、県組合での研修体制を拡充させる。

(4) 組織への若手理容師・員外者の取り込みによる組織力強化
① 組合員の減少を食い止め、組合組織の維持・強化を図る。このため、全理連・県組合においては組織運営につき若い理容師の発言権・組合への参画権の確保に努める。
② 組合員(理容店経営者)の減少を食い止めることが出来ない場合に備え、若手理容師・員外者を取り込める組織作りを行い、業務独占の維持を中心にした政治力の維持・強化を図る。
  (ア) 新規組織を組成する場合は、他の資格者団体と同様の役割をもつ、例えば「理容師協議会」のような理容師団体を想定し、理容師の資格取得と同時に入会することを検討する。
  (イ) 既存組織を利用する場合には、理容政治連盟の活用も検討する。その場合、新規加入者の合意を取り付けるため、従来の運営方法を見直す。
③ 若手理容師の一体感を高めるために、年1回程度決起大会を開催することも検討する。

 

3. 長期的な業界戦略

(1)長期的な業界戦略策定の必要性
① 組合員が業務独占に関し、健全な危機感を持ち、堅持のための行動を取ることが、理容業界を維持・発展させるための基本であることを認識する。この点に関し、組合員の間にこの認識が浸透していない例が散見される。
② そのためには、今後進展する規制緩和により名称独占あるいは資格制度が廃止になってしまった場合、異業種や効率優先の大企業の参入や無資格者営業の乱立により、(ア)衛生・安全が業界全体として確保出来ず、組合員が消費者の信頼を失いかねなくなる可能性、(イ)無店舗営業の拡大、(ウ)競争激化に伴う経営悪化等、の結果サービスの質の低下を招く可能性を認識する。

(2)業務独占維持の論理=衛生・安全
① 消費者の支持を得るための公衆衛生の確保が課題
② 公衆衛生の確保に行政の関与が必要
③ 消費者意識の醸成、世論の合意形成が必要―名称独占や資格制度が廃止となった場合の消費者が抱えるリスクを適切に訴える。即ち、消費者には、エイズ、B型肝炎等の感染症および薬液、鋭利な刃物による事故等、リスクを内包したサービスを受け入れざるを得ない立場にあることを認識して貰う。

(3)業務独占を問題視する動きへの対応
 今後、規制改革・民間開放推進会議等に関して、業務独占を問題視する議論が出る可能性がある。これには、理容・美容の業界が協調して対応することが必要である。

 

以上


 

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