毛髪のしくみ

 毛髪は爪と同じように皮膚の付属器官で、本質的には皮膚の一部です。単に皮膚の上に生えているのではなく、皮膚が形を変えて分化したもので、言い替えれば、毛髪は大地に生えている雑草のようなものではなく、大地そのものが形を変えて成長しているようなものと言えます。発生学的には外胚葉から発生しており、ここから発生しているものには表皮の他に神経系感覚器官、毛、脳髄などがあり、これらは色々関連をもっています。

毛髪の構造

髪の断面

毛髪は「のり巻き寿司」と同じような構造になっており、外側から中心に向かって毛表皮(のり)、皮質(ごはん)、髄質(かんぴょう)の三層からなっています。

どのような働きをしているかは、下記を参照してください。

毛表皮(Cuticula)
 キューティクルは角化した無色透明の細胞が、根元側から毛先側に向かって鱗片状または屋根瓦状に重なり、内部を保護するように取り巻いています。一枚のウロコ(キューティクル)の長さは80~100ミクロン、厚みは0.5~1ミクロンで、外側から親油性でアルカリに強いエピキューティクル、中間的な性質のエキソキューティクル、一番内側の親水性でアルカリに溶けやすいエンドキューティクルに分かれています。
 普通の毛髪は4~8枚のウロコとウロコが重なり合って表皮を形成し、外から見える部分は全体の4分の1前後です。このウロコとウロコの隙間は0.1ミクロン程度で、水蒸気や染毛剤、コールド液、トリートメント剤などはここから入り込んでいきます。水やアルカリを作用させると、内側のエンドキューティクルの方が水やアルカリに親しみやすいのでよく膨れ、バイメタルのように 外側に向かってせり出し、キューティクルが開いてきます。外から見えるウロコの模様を紋理といい、発生部位や個人によって異なるため、指紋のように法医学の分野で犯罪捜査に使われます。
 一般に紋理は毛先側が細かく、根元側は荒くなっています。また、病気などにかかると細かくなるので、紋理を調べる事によって病気の有無や時期、期間などを見分けることができます。

皮質(Cortex)
 毛髪の中で一番大切な部分で、角化繊維細胞が麻縄のようにしっかりと詰まっている部分で、毛髪の性質を色々左右したり、パーマや毛染めなどの美容の対象になっています。

髄質(Medulla)
 毛髪の中心部分で、毛髪によっては無いものや、一本の毛髪でもきちんとあるものや、とぎれとぎれになっているものがあり、空気の泡を含んでおり、普通は年齢とともに太くなるが、強度は低下していきます。

毛髪の色(色素・Melanin)
 私たちの毛髪にはメラニン色素が含まれていて、それが毛髪の色を左右しています。また、皮膚の色もメラニン色素が関係しています。毛髪をはじめ皮膚や内臓器官まで身体の至るところにメラニン色素はありますが、毛髪、皮膚、瞳孔など皮膚表面に含まれるメラニン色素は、私たちの身体を有害な紫外線の害から護るためにつくられています。そのため赤道直下に住む人種は紫外線の害も強いため、髪は縮れ、黒色で、肌も褐色から黒色になっており、北欧などの太陽光線の弱い所に住む人種はメラニン色素が少なく、毛髪は明るい金髪になり、肌は白色になっています。
 毛髪の色は毛皮質中に含まれるメラニン色素の量によって決まり、多ければ多い程日本人のように黒色は濃くなり、メラニン色素含有量が少ないと欧米人のように褐色から茶色、金色、灰色にまで明るくなっていきます。さらに全く無い場合は白髪になってしまいます。
 人種によって毛髪の色調が異なるのは、ユウメラニンとフェオメラニンの混合比や、メラニンの量の違いによるためで、完全な遺伝によるもので、その人の持っている遺伝的な形質は後天的には変えることはできません。ちなみに日本人の場合はユウメラニンとフェオメラニンの割合は約20対1であると報告されています。

なぜ髪の毛は伸びる

(1)毛髪の生え方

 一本の毛髪の皮膚の表面に出た部分を毛幹部と言い、皮膚の中に埋もれている部分を毛根部と言います。毛根は毛包という鞘状のものに包まれていて、毛髪はこの中を伸びて皮膚表面に現れ出て、外へ外へと押し出されて伸び続けていきます。
 毛包の下の部分は玉ねぎ状にふくらんでおり、この部分を毛球と言います。この毛球の末端はろうそくの炎の形のように凹んでいて、毛乳頭を包んでいます。毛球と毛乳頭がかみあったような形になっており、毛乳頭には毛母細胞を養う血管が分布していて、毛髪の発育に大切な役割を担っています。ここでケラチンという硬い蛋白質をつくり、このケラチン蛋白質がどんどん作られると毛母細胞は大きく成長し、分裂を繰り返して押し出すように毛髪を作って送りだしています。

 成長期にある毛髪が目に見えて成長することから分かるように、毛球部の毛母細胞は、体を作っている細胞の中でも生活力が活発な細胞で、毛球の下二分の一の部分で絶えず分裂・増殖を続け、毛髪本体と毛根鞘を作り、しだいに上に押し上げられ、水分を失って角化を行いながら各層への分化が始まります。
 毛髪をつくる細胞は毛球の中心あたりから分裂し、毛の色を作る色素細胞(メラノサイト)の作ったメラニン色素を取り込みながら角化を進めて毛髪を成長させていきます。

 健康な毛髪が作られるには、毛包、毛乳頭が存在すること、栄養状態が良好で血行も順調であり、アミノ酸やビタミン、ミネラルが十分に送られてくること、蛋白合成酵素が存在して、その働きに必要な自律神経やホルモンに異常がないことなど、これらすべてが毛髪の健康にとっては必要なものということになります。毛髪の成長は毛先が伸びるのではなく、血液が運んでくる栄養分によって毛根部の毛乳頭で細胞が分裂して毛が作られ、外へ外へと押し出されて伸びていくもので、頭骨の発達やその他の事情により血管が圧迫されて血行が悪くなると、毛の成長が阻害されてしまいます。
 毛髪の成長のための栄養は、血液中の栄養からとるのが基本原則で、そのため不規則な食事や偏食に注意し、常にバランスのとれた栄養を豊富に毛乳頭に送り込むようにすることが大切であると言えます。

(2)毛周期と脱毛→ヘアサイクル

 人間の頭髪は生えてから同じものが一生伸び続けるのではなく、一定期間成長した後に自然に抜け、またしばらくすると、同じ所から同じような毛が生えてきて、全体としては毛量は一定しています。
  この生え変わりの現象を毛周期(ヘアサイクル)と言い、このヘアサイクルは年齢、性等によって多少違い、女性は4~6年、男性は3~5年の成長期を続け、平均すると約5年の成長期を持っています。
 日本人の頭髪は約10万本生えていますが、これが5年で抜け変わっていますので、計算すると一日約55本となり、この数が一応正常な抜け毛の数と数えることができます。この抜け毛の数は健康状態、栄養状態、年齢、季節などとも関係があり、個人や性によってサイクルが異なるので、3年の成長期で91本、6年で46本ということになり、この範囲が正常ということで、抜けた毛が正常な脱毛根であれば問題ありませんが、異常脱毛根の場合は数は少なくても要注意ということになります。


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