平成29年度業界振興論文・優秀賞

「地域に愛されるサロンであるために」

池田正男(滋賀県組合)

 

《目次》

はじめに

1.既存顧客に自店を知っていただく。
 ①リーフレット(サロン情報とメニュー表)
 ②ご紹介カード(名刺サイズ/両面印刷)
 ③情報チラシ(A4サイズ/両面印刷)
 ③-1「シャンプー」
 ③-2「ヘッドマッサージ」
 ③-3「就活ヘア」

2.「共創」が生まれる販売促進ツール

まとめ

 

はじめに

 我々を取り巻く社会環境は、少子高齢化やデジタルインフラの整備による情報化などにより大きく変革している。現在の世界中から情報が得られる情報過多社会においては、ある情報に出会えたとしても、記憶に残る前に次の情報がやってくるために、すぐに情報が上書きされてしまう。情報を発信するサロン経営者である私にとって、これは大きな問題である。
 これまで、利用者の立場に立ち、ただ価格が安いだけの店ではなく、こういうサービスを提供する店を利用したいだろうと考えて、新メニューや既存メニューを細分化したオプションメニューの提案、天然の植物由来商品の販売など、お客様に喜んでいただくための努力をしてきた。
 やってきたことは必要だったはずであるが、お客様に伝わっていなければ、何もしていないのと同じことである。
 現在のような情報の時代だからこそ、お客様にとって有益な情報を確実に伝え、その情報がお客様によって活かされてこそ、お客様から信頼いただき、必要とされる「愛されるサロン」になるのだと私は考える。
 そして自店が「地域に愛されるサロン」として存続するため、現状にプラスアルファの売上を上げるには、売上を構成する要素である「客数」と「客単価」を上げる必要がある。まず「客数」に関しては、来店周期の短縮と新規顧客獲得を目指し、もう一つの要素である「客単価」に関しては、オプションメニューの売上と商品の売上アップを目指すこととし、現代の情報競争に巻き込まれずに、これらを実行した。
 本論では、自店の現状にあったアナログな販売促進方法を紹介させていただき、「地域に愛されるサロン」であるための考察をさせていただきたい。

1.既存顧客に自店を知っていただく。

 創業以来、自店における新規顧客獲得方法は、ただ、ひたすら実直にコツコツと、営業し続けるだけで、自然発生的に新規のお客様がご来店くださるというものだった。その中でも、常連のお客様からの紹介で来店されたお客様の多くは、その後も続けて来店いただけていることから、家族や友人からの紹介は安心感があるため、初回来店のハードルを下げる上に、家族や友人はそもそも好みが近いため、固定客となる可能性を高くすると感じていた。
 つまり、新規顧客獲得をしたいのならば、まずは既存顧客に自店のウリ(価値・強み)を知っていただき、紹介していただきやすい環境を作る必要があると考えた。
 既存顧客の多くは毎回メニュー表を見ること無く「いつものコース」を利用される。このことを私は問題視してはいなかった。「お客様はいつものコースで満足している」と思い込んでいたからだ。
 しかし実際は、他にどのようなメニューがあるのか、認知されていないということも理由なのだと、気づかされたことがある。
 以前、導入しているポイント制度の特典に、マッサージや、フェイシャルエステなどのオプションメニューを追加した際、ポイント特典で体験した技術メニューを、その後に利用される方が多く、うれしい驚きがあった。潜在的なニーズを引き出せた好例である反面、自店の課題が明確になった瞬間でもあった。
 サロン側の私にとっては、マッサージやフェイシャルエステもできるという当たり前のことが、お客様にとっては当たり前ではないということに気づかされたのだ。
 そこで、メニューの認知度を向上させるため、自店のメニュー表を見やすく分かりやすいものに作り直すこととした。
 次に、親の代から引き継いだ、常連のお客様も含めて、自店の既存顧客も高齢化が進んでいることに注目し、高齢化だからこそ、中高齢者に対する販売促進方法として、紙媒体はまだまだ有効だと考えた。
 ネットによる集客が、勢いを増す昨今、伝えたい情報を伝えたい相手に伝えるのは、至難のワザである。そもそも老若男女問わず、ネットをよく利用している人もいれば、あまり利用していない人、全く利用していない人も多くいるからだ。
 そこで今回は、紙媒体を作成し手渡しで配布するというアナログな方法が自店においては、最も有効な販売促進方法であると考えた。
作成したのは、以下の3種類だ。
①リーフレット(サロン情報とメニュー表)
②ご紹介カード(名刺サイズ/両面印刷)
③情報チラシ(A4サイズ/両面印刷)
 まずリーフレットには、サロン情報とメニュー表をできるだけ大きい文字で明記し、簡単な説明をつけた。

資料①メニュー表

 毎回同じコースをされる方に、改めて他のメニューを認知していただき、カット以外のメニューでの来店周期の短縮とオプションメニューでの客単価アップを目的に作成した。
 次に、ご紹介カードには、サロン情報や女性向けシェービングメニュー、スタッフの似顔絵、ご紹介時の来店特典を記載した。特典は、紹介する側・される側双方に対して自店で人気のヘッドスパ等をサービスする旨を明記し、紹介者の名前を記入できるようにした。名刺サイズの紙面にサロン情報を凝縮し、手軽にご紹介いただく目的で作成した。なお、理容業は、人対人で成り立つサービス業であり、一番の商品(強み)は、人(理容師)であると考え、スタッフの似顔絵を掲載した。
 リーフレットとご紹介カードはセットにして手渡し、必ずお声がけをして持ち帰って見ていただくようにお願いしている。

「あんなにメニューがあるとは、知らなかった」「人に説明するのにも便利だ」と言って下さる方も多く、好評をいただいている。 

資料②ご紹介カード(名刺サイズ/両面印刷)

 実は数年前、「正しいシャンプー方法」と「簡単ヘッドマッサージ」を、セルフケアで行っていただけるようにオリジナルの解説を入れ、お客様に配布した。その際、「どんなシャンプー剤を使ったら良いの?」「もっと簡単な方法は?」等の反応があった。そこで、「正しいシャンプー方法」の裏面には、推奨商品のシャンプー剤とスカルプシャンプーブラシを、「簡単ヘッドマッサージ」の裏面には、推奨商品の育毛剤とスカルプケア用品を追加掲載したものを新たに作成した。

資料③-1情報チラシ(A4サイズ/両面印刷)「シャンプー」

 本来、正しいシャンプー方法通りにシャンプーしなければ効果が無いどころか、薄毛になるリスクが高まる。それでも「正しいシャンプー方法を毎回するのは難しい」という方には、裏面に掲載しているスカルプシャンプーブラシを使用すれば、簡単に同様の効果が得られると勧め、シャンプー施術の際に体感していただくことで、納得して購入いただいている。また脱毛予防や、育毛のためのヘッドマッサージは、毎日やらなければ効果が出ないのだが、両手を使って頭皮を揉むゆとりの無い方も多いので、裏面に掲載しているスカルプケア用品を使用すれば、何かの片手間で効果が得られる、と勧めることができる。
 特に、スカルプシャンプーブラシなどのスカルプケア用品は「期待される効果効能+気持ち良さ」で売ることのできる体感型商品である。通信販売や商品を陳列しているだけの小売店と違い、体感していただけるサロン環境があるからこそ、非常に売りやすい商品であると確信した。
 情報チラシは、セルフケアで、お金をかけずにできる情報とお金をかけてできる情報を、両面に掲載することで、単なる商品の売り込みにならないようにした。情報があるから受け取っていただけ、持ち帰ってじっくり見ていただける。選択肢を与えられたお客様は、必要性を感じて購入するので、続けて再購入される方も多くなった。
 このように自店が発信する情報を体感されたお客様は、自店に対する信頼をさらに深めてくださり、継続的な来店と商品の購入につながっている。

資料③-2情報チラシ(A4サイズ/両面印刷)「ヘッドマッサージ」

 次のチラシは「就活ヘア」を提案するものだ。チラシの素材となったのは、全理連が作成した就活ヘアの冊子である。
 この冊子は「就活ヘア」の①前髪が眉毛にかからない、②サイドが耳にかからない、③えり足がエリにかからない、というヘアスタイルの3つのポイントが分かりやすく解説された良い資料だが、組合からの配布は一店舗に一冊のみであった。
 就職活動をする学生やその親世代のお客様など、多くの方に見ていただくためにも手渡して、持ち帰っていただけるチラシが有効だと考え、サロン情報と推奨する整髪料を掲載し、オリジナルの情報チラシとして作成し、配布している。
 就活に向けて、それまでとは違うヘアスタイルになる方から、スタイリング方法を尋ねられることが多くなり、方法を伝える際に、整髪料の特長や付け方のコツを説明しているので、整髪料も良く売れるようになった。

資料③-3情報チラシ(A4サイズ/両面印刷)「就活ヘア」

 

2.「共創」が生まれる販売促進ツール 

 以上、紹介した3種類の販売促進ツールによる方法は、瞬発力は無いが、じっくりと時間をかけて既存顧客に浸透させるチカラがある。キャンペーンやクーポンで一時的な業績に振り回されるのではなく、じっくりと地に足を付けたサロン経営ができるのだ。
 販売促進ツールを手渡した後、次のカットのタイミングで反応を示される方もあれば、半年後に思い出したようにチラシに掲載していた商品を購入されたり、約一年後になって、セルフケアでヘッドマッサージを実践した効果に喜びの声をいただいたりした。
 また、奥様にシェービングを勧めて紹介してくださる方もあり、新規顧客獲得にも効果が出てきている。
 このように、きっかけはいつも、お客様の声から生まれ、「共創」というカタチで、サロンにもお客様にも良い結果となっている。

まとめ

 経営者となって最初に「すべてはお客様の笑顔のために」という経営理念を掲げた。地方の小さな理容サロンであればあるほど、地域の方々の生活に寄り添い「いつもの店でいつものサービスを受けられる安心」を提供し続けることが使命だとの思いからであった。
 お客様からの変わらぬご愛顧をいただくためには、時代に合わせて変わり続けなければならない。そのための方法はアナログでもデジタルでもいいと思う。
 ただ、単なる営利目的の経営者にならず、常に自分が利用者だったらと考え、お客様の声に耳を傾けて、地域の方々に満足していただける技術や知識・商品を提供し続けることで「あなたの店があって良かった」と言っていただける、この町に無くてはならない「地域に愛されるサロン」であり続けたいと思う。
 すぐそばにいる大切な人々を笑顔にするために。

 

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