平成28年度業界振興論文・優秀賞

「技術を売る時代から価値を売る時代へ」
お客様にリピート(再来店)して戴くための集客術と今後の展望

宇都宮まどか(福岡県組合)

 

【序論】

 理容業界に限らず他の職種でも共通の悩みといえば景気低迷や店舗の減少による業界の衰退です。その原因の一つとして言えるのは増え続ける低料金店へのお客様の流出です。低料金店が出店し始めた頃には「安かろう、悪かろう」とまさかこれほどまでに深刻な商売敵になるであろうとは思ってもいなかったと思います。しかし、今となっては低料金店に流れてしまったお客様層は自分たちが把握している以上に深刻だと言えます。
 では、技術の安売りで料金を同じように下げることで対抗するのか?それとも何もせずお客様が減っていき、淘汰されていくのを待つのか?
 いいえ、今こそ従来の技術や料金に加えて正規の理髪店で髪を切る事の価値や必要性を宣伝することで私達が身近すぎて見えていなかった理髪店の素晴らしい価値を新たな魅力としてご提案したいと思います。

【本論】

 理容業界が再活性化するためには個々のお店で安定した売上を上げなければなりません。 では、売上を上げるためにどうすればよいのか。
 答えは簡単です。①来店客数を増やす。(新規客も含めて)②来店周期を短くする。③施術単価をアップさせる。というのが一般的な戦略です。しかし言うのは簡単ですが結果を出すのが難しいのが現実です。それでは、売上を上げるためにどう行動に移せば良いのかを考えてみます。
 お客様が理髪店に来店される目的は髪や容姿を整えることです。皆さんのお店では、お客様に発信しているサロン情報とは、数字だけの料金表だけであったり技術メニュー表だったりしていませんか?それってお店の都合ですよね。これだけ料金を頂きます。このメニューをされたら金額はこれくらい頂きます。というのはお客様が理髪店を必要と感じてくれる情報と少しずれているために来店動機までに繋がらないと思いませんか?
 理髪店が商売として成り立つにはお客様が来店されて髪を切り、容姿を整える事でお金を頂く。このシステムにこだわりすぎると新しいアプローチも見出せません。もっと違う角度から理髪店の存在価値を考えてみましょう。お客様はなんとなく髪を切る店を選ぶのでなく理髪店側から発信する集客情報(プレゼン)を見てその理髪店の髪に対する施術や得意技、髪をケアする手段などに共感してお店選びをされています。
 それは、一見すると銀行と顧客の関係に理髪店も重なることに気が付きました。つまり、私たち理容師はお客様から大事な毛髪という財産を預かります。それを活かし、増やし魅力ある財産に成長させることが仕事であるとアプローチ出来ればお客様との今の関係も変わってくると思いませんか。銀行がお客様から選ばれるようにお客様が大切な財産である髪を託すために選ぶサロンになるためには理髪店として貴方の髪を私の店に預けて頂ければこれくらい成長させ魅力的に変えます。そのために長いお付き合いとケアをお任せくださいと売り込み契約を取る。というふうにお客様との信頼関係を築きあげるのです。
 お客様から大切な毛髪を預かりどう未来へ向かって一緒に育てていくのかを宣伝できれば、お客様にとっての来店動機となります。サロンのホームページも同じですよね。ただ施設の豪華さのアピールや流行りを重視したヘアスタイルばかりを掲載したとしても自分には必要ないと思うお客様だと見向きもされません。お客様は新しい変化を求める方ばかりではなく、むしろ安定して安全で衛生面が充実しており確かな技術を備えたサロンで髪をお任せしたいと思うはずです。ぜひお客様へ店のこだわりを伝えてお客様の毛髪をお預かりできるような提案を考えてみてはどうでしょうか。
 次に来店頻度を短くする方法ですが、私のサロンでも導入していますが次回予約制をお勧めします。次回予約というのはお客様がお帰りの際に次回の来店予定日を決めて頂くシステムのことです。歯医者で治療を行うと必ず次回の来院日を決めて帰りますよね。それと同じように次回の来店予定をお客様と決めます。次回予約をされるということは、即ち必ずリピートされることを約束します。次回予約制を始めてから想定外の嬉しい変化が起きました。それは次回の来店日をお客様自身で考えて頂くときに少しずつではありますが来店周期が短くなっていくのです。従来であれば髪が伸びてきて野暮ったくなり鬱陶しくなってから「髪を切りに行こうか」と意識し始めるのでどちらかと言えば来店周期は長くなる傾向にありました。しかしお客様が仕事やプライベートの予定との絡みを考えながら次回予定日を検討すると必然的に予定よりも前に散髪しようと考える訳です。そこが思いがけず早く来店してしまうという良い結果に繋がりました。当店のお客様で次回予約をされる方のおよそ7割の方が次回予約制の導入前よりも来店周期が短くなり売上に貢献しております。必ず次回、来店するという約束を得ることができて、しかも来店周期が短くなるという次回予約制はぜひ皆さんのサロンでも試して頂きたいです。多忙な方ほど次回の予定を決めてもらえるので嬉しい。という好評も頂いております。
 次に売上をあげるためにはお客様に次回来店を促すためのご提案メニューが必要です。一番のお勧め技術は何だかわかりますか?それは洗髪のみでのご来店、もしくはお顔剃りのみでのご来店です。なぜ洗髪やお顔剃りメニューで売上アップを期待できるかといいますと、例えばカットをされるお客様から「次はいつ予約すれば良いかしら?」と尋ねられたら最短でも2週間後、3週間後で髪の長い女性であれば一ヵ月後、二ヶ月後は当たり前です。カラーやパーマを希望されるお客様には最低一ヵ月は間を置いてからのご提案になりますよね。しかし洗髪ならどうでしょう。毎日行う事ですし、お金に余裕があれば毎日でもサロンに通いたいと思う方も少なくないと思います。洗髪なら一ヵ月後と言わず、毎日でもサロンへご来店くださいと言えますよね。お顔剃りも同じです。男性であれば毎日の日課でしょうから、予算に余裕があれば髪結いの亭主みたいに毎日でもサロンでお顔の手入れができるならやってみたいと一度は思ったことがあるはずです。つまり、洗髪とお顔剃りメニューには月に何度でも来店頂けて稼げるメニューだといえるのです。単価は高いけど周期が長く特別な粧材や技術を伴うパーマやカラー技術も売上アップに必要でしょうが、基本技術の洗髪やお顔剃りメニューもしっかりお金が稼げる技術なのです。
 年寄だから稼げない。そんなことはありません。経験値の高い熟練者として自信を持ってください。お店が古いから新しいお客様も来ないだろう。いいえ、お客様がお店の魅力として一番に感じるのは技術を行う人なのです。貴方の髪を任せてくださいという気持ちが伝われば設備の古さは問題ではありません。特別なパーマや流行りのカラーができない。それでいいのです。床屋に行くのは顔剃りが一番の楽しみ。と言われるお客様は大勢います。そのお客様を大切に接客することが大事です。理髪店の技術で最も稼げるのはお顔剃りであり、洗髪技術なのですからその一点を極めてみませんか。地域で一番上手な洗髪のお店。寝てしまうくらい気持ちよいお顔剃りが体験できる店。これこそが明日から始められる売上をあげるための第一歩です。
 残念なことは、それほど素晴らしい売れる技術を既に持っていることに気が付いていない理容師さんが多いということです。

【結論】

 売上が低迷している理由を色々と並べても何も解決はしません。お客様が増えない原因は気持ち良い理髪店の魅力を宣伝しきれていない現状にあるのです。私は自分のお店の在り方を「死ぬほど気持ちよいお顔剃りが体験できる理髪店」でありたいと意識して努力しております。お顔剃りの時の居心地に関しては研究に研究を重ねて今でも追及して終わりはないです。施術中の居心地を単に新しい機種へ買い替えることで済ませるのでなく、従来の使い込んだ椅子のままでも最高級の寝心地を提供できないか?を考える毎日です。身体に不自由のある方や体が病気やケガ等で屈折した方を含め、頸椎に損傷がある方や心理的に神経質な方などすべてのお客様にお顔剃り中に本気で寝ることを体験して頂きたいと思っております。寝る行為は究極の気持ち良さだと思うからです。その「絶対に寝てしまうお顔剃り」の実現を可能にしたのが高反発のベットマットをサロンの施術椅子の形に切り出し、二枚重ねに敷いて行うお顔剃りです。このマットが完成してからはお客様から腰が浮かず楽です。何時間寝てもつらくない。とうれしいお言葉を頂くようになり更なる工夫への励みとなっております。
 お顔剃りや洗髪の技術がカラーやパーマに劣らない稼げるメニューである確信がありますし自分の理髪店の魅力としてこれからの最大限売り込んでいきたいです。工夫次第ではもっと楽しく稼げる技術であると皆さんにも知って頂きたいです。理髪店でのお顔剃りは理容師でしか施術できません。
 定年もなく、体と気力が元気なら90歳を越えてもパワフルに現役を続けられている理容師さんも居るくらい素晴らしい業界です。他業種から羨ましがられるくらい元気な理容業界に復活するためにも今ある技術に磨きをかけて共有して盛り上げていきたいです。

ありがとうございます。

添付画像(1) 現在使用している施術椅子
添付画像(2) 以前のお顔剃りをする状態
添付画像(3)手作りの高反発マット一枚目
添付画像(4)高反発マットの2枚重ね
添付画像(5)現在のお顔剃りの施術状態

 

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