令和元年度業界振興論文・最優秀賞

 

理容師歴30年! わたしの女性集客物語

鷲野 紀子(福井県組合)

 

はじめに

 今から20年前、若き日の私は焦っていました。理容師免許を取得したものの、子育てや家事で忙しく、カットを勉強するタイミングを逃したので私はカットができません。お店の戦力にならないことにずっと罪悪感をもっていた私は、それを穴埋めするかのように、義母が担当していた「お顔そり」をやりたいと思うようになりました。
 私は義母のお客様を横取りするように「お顔そり」をしました。しかし、後日来店したお客様に「あなたではいやなの。お義母さんにやってほしい」と言われたのです。そして「お顔そり」のお客様がとうとう0人になりました。「もういやだ。理容師なんかやめてしまおう」
 でも、私は絶望の中で一筋の光を見つけたのです。それは、私が理容師であること。お客様のお肌に直接刃物をあてる「お顔そり」ができるのは国家資格を持つ理容師だけ。理容師であることこそ「最大にして最高の武器」であることを再認識したのです。「お肌ケアのプロ」として女性のお肌の悩みを解決し、そのお客さまをキラキラ輝く笑顔にしたい。そう強く思いました。
 そのためには来店してもらわなければ始まらない。「本気の女性集客をやろう」私は覚悟を決めました。肌や化粧品の勉強を徹底的にやり、エステスクールにも通いました。
 あれから20年。今では多い時は一か月に100人以上の女性のお客様が「お顔そり」に来店するサロンになりました。

「女性集客」のためにやった6つの取り組み

市の生涯学習講座のセミナー講師になって受講者の「地元の女性」に「サロンと私」を知ってもらう
 開講した女性向けの295講座で、のべ4500名の女性と出会うことができた
【得られる集客効果】
・認知度アップ
・実際に会うことで親近感が増す
・知識を持った先生として信頼される

SNSの拡散力を徹底的に利用して「お肌の悩みを解決したい人」「美しくなりたい人」に「サロンと私」を見つけてもらう
【得られる集客効果】
・無料なのに大きな宣伝効果がある
・まだ会っていない人とつながりができる
・いいね!やコメントのやり取りでコミュニケーションがとれる

毎日更新のブログで「私」に親近感を持ち
 生き方や信念に共感してもらう
 ブログ開始からの16年間で約3600記事を投稿。2018年4月から現在まで毎日投稿中。県のブロガートップ10に選出も。
【得られる集客効果】
・書き手の感情や意見など人柄を知ることで親近感を与える
・会っていないのに友達のように感じてもらえる
・セミナーやワークの告知やLINE@登録への誘導ができる
・お顔そりの優れた美肌効果を伝えることができる

極上のおもてなしで「来店したこと」と「美肌への変化」に満足してもらう
【得られる集客効果】
・理容店という期待値の低さを覆す極上体験で感動してもらえる
・その場で肌の違いがわかるので「続けたい」と感じてもらう
・「月に一度のお顔そりケア」を伝えリピートにつなげる

LINE@公式アカウントに登録した優良客を「特別会員として差別化」しリピートしてもらう
【得られる集客効果】
・web予約システムとして利用できる
・「お知らせ」を一斉送信できる
・1対1のコミュニケーションがとれるので関係性がより深まる
・誕生日クーポンなど会員特典を多数用意
・「お客さまの声」が自然に集まる

サロンで開催するワークショップで「関係性を深めて」ファンになってもらう
【得られる集客効果】
・楽しい時間を共有して関係性が深まる
・参加者どうしが親しくなって仲間になる
・参加者がワークの様子をSNSで投稿してくれる

 

「6つの取り組み」の関連性まとめ

「6つの取り組み」が自動集客システムに

 6つの取り組みにより、潜在客から固定客を経てファン客に育っています。それに伴いお客様の行動も変化していきました。ファン客はSNSで口コミをしてくれるので新規客の獲得につながります。つまり、ファン客を多く育てることが、サロンの集客力を上げることになります。こうして、集めるのではなくお客様が自分から集まってくる「自動集客システム」が出来上がっていました。

「自動集客システム」の起動力はブログ

 ブログは更新頻度を上げて活性化することが「自動集客システム」を動かす起動力となっています。また、ブログを情報発信のメイン基地とし「6つの取り組み」の内容はすべてブログに投稿→連携機能を使ってフェイスブックとツイッターにも自動投稿→それを見た潜在客がリンクをたどってブログにたどりつく→ブログの投稿記事にはLINE@へ登録するQRコードを設置→登録してもらって来店予約へ→そして来店。スムーズな顧客誘導の流れが構築されています。
 webマーケティング専門家の間では「ブログ集客はもう古い」との意見もありますが、仕事の合間や一日の終わりのスキマ時間を利用するなどすれば、取り組みやすく集客にも効果的なメディアです。
 お客様に「実はずっとブログ見てたんです」と言われることも多く、来店のきっかけになっています。今こそブログ!楽しく取り組んでいただきたいです。

「お客様へのアンケート」からわかる「自動集客システム」の成果と「顧客満足度」

 私のサロンはいかにもメンズサロンという店構えで「お顔そり」ができることを知らせる看板はひとつもありません。それなのに多くの女性の来店があるのは「ネットでの情報拡散とファン客による口コミ」が「自動集客システム」を動かし、効果的な来店誘導となっていることがわかります。


「お顔そり」の美肌効果に喜びの声が多数です。最近、テレビでよく見かける「この化粧品を使用すれば一か月後にはこんなにキレイになれる!」のCM。一か月後でないと結果が出ないのでは今どきの女性は納得しません。 それに比べて「お顔そり」はすぐにお肌の変化がわかる優れた美肌術です。
 私たち女性理容師はこの素晴らしい「お顔そり」の技術を持っていることにもっと自信を持つべきです。

③お顔そりをする前とした後の「気持ちの変化」は?
・すっきりとする。満たされた感じ
・鏡の前にたつと、自然と笑顔になれます
・綺麗になったという満足感が得られます
・また明日から頑張ろうって思えます
・悩みを聞いてもらったり、色んな話をしながらしてもらって、顔だけじゃなく、心までスッキリ!
・自分のためだけに時間を使う事がないので、お顔そりの時間は至福のひとときです
・私、今日いつもより綺麗です。ものすごく気分が良いです。午後から新しい洋服でも買いに行こうかと思います
 
 お客様のウキウキした気持ちが伝わってくるような嬉しい回答です。「お顔そり」が女性に与える気持ちの変化は、私が想像する以上に大きいことに気づきました。

私の考える「女性集客戦略」とは?まとめ
 
お客様のほうから来店してくれるベルトコンベアーのような自動集客システムを創ることによって、口コミや紹介で新規客を連れてきてくれるファン客を増やすこと、友だちに紹介したくなるようなサロンを創ることです。
 その目的は、自己肯定感が低く、自分のことを好きになれない女性に「お顔そり」で「美しいお肌」を提供し自信を取り戻してもらうこと、美肌を手に入れたお客様の未来に起こる幸せな変化に感動してもらうことです。
 「女性集客」はつらいものでも難しいものでもありません。「伝えたいこと(お顔そりのよさ)」を「伝えたい人(お客様)」に「ちゃんと伝えて(集客)」「来店してもらう(集客の成果)」という、実はとてもシンプルなものです。
 「お客様を集める」のではなく、まるで花に集まるミツバチのように「お客様のほうから集まってくる」それが私の考える理想の「女性集客」です。
 ミツバチ(お客様)がたくさん集まる甘い蜜(お客様が望むこと)をたっぷりと湛えた、ひときわ目立つ花(ブランディング)になること。それが「ここへ来てよかった!あなたにお顔そりをしてもらってよかった!」と喜ぶ女性を一人でも多く増やすことにつながるのです。

終わりに
 私は平成元年に理容師免許を取得し今年で理容師歴30年になります。カットやパーマができない私にとって「お顔そり」を極めていくしか道はありませんでした。この長い年月は、いつでもわくわくしながら「女性集客」の方法を考え、行動に移す楽しい日々でもありました。
 令和という新しい時代を迎えた今、私の理容師人生もアップデートを迫られているような気がしました。次のチャレンジは「女性集客の悩み」を持つ女性理容師さんに同じ仲間として、私の取り組んできた「女性集客」をお伝えすることだと思いました。
 私の書いた「女性集客」という物語が、あなたの心の扉を開けてくれますように。

 

審査講評
審査委員長  岩田三代(ジャーナリスト)

  理容といえば男性のイメージが強い。だが、かつて女性のイメージだった美容院に多くの男性客が通う時代。理容師歴30年の筆者は、理容室
も「お肌のケアのプロ」としての魅力を売り込み、女性客を取り込もうと呼びかける。カギは理容師のみに許された「顔そり」だ。
 筆者は子育てや家事に追われ、カット技術を磨くタイミングを逸した。前途に希望を見いだせず「理容師なんてやめてしまおう」と思ったこともある。それを救ったのが女性集客への思い。肌や化粧品の勉強をし、エステスクールにも通った。それから20年。今や月に100人以上の女性客
が顔そりに通うサロンになった。
 論文に説得力を持たせているのは、集客のための6つの取り組みなど、自分の経験を具体的に綴っていること。セミナーの講師になったり、ブログを毎日更新したり。潜在客が固定客に、そしてファン客に変化した。女性のいるところには男性も寄ってくる? 男女共同参画時代の理容室のあり方かもしれない。


 

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