「理容2006メッセージ全国大会」優勝作品

「すべてはお客様から」

九州協議会代表(福岡県)山口 直美

 

 目の前のお客様から言われた事に1秒で答える、それが私のモットーです。
 『今度コンパがあるっちゃけど、何かいいのない?』
 『だったら、ネイルケアなんどう?女性の好感度アップ間違いなしよ!』
 『今年も父の日のプレゼントメニューなんてやっているんですか?』
 『ハイ!艶男で、ちょいもて親父になれるメンズエステのコースなんていかがですか?チケットを製作しますので、プレゼント用に渡してはいかがですか?』
 理容一家で育ってきた私はここまで言うのに十八年かかりました。
 以前は仕方がないものは『やっていません』と答えていました。
 『私は顔剃りがしたいんだけど、周りは男性ばかりで恥ずかしいなー』そんな一言を言われても、うちは理容室だから仕方がないではないか、なんて思っている私には、お客様をワクワクさせてあげられるはずもなく、期待して下さるはずもありません。毎日お店で働いて、小さな枠の中で物事を考える事しか出来なかった私には、仕事を頑張りたい意欲とお客様の求めているものとのギャップを感じ、もうこれ位しか出来ないのかなぁと諦めに近い気持ちも芽生えていました。
 そんな私にチャンスが巡ってきました。お客様があるホテルの事を書かれた一冊の本をプレゼントしてくださったのです。
 そのホテルはお客様への心のこもったおもてなしと、快適さを提供する事を最も大切な使命とし、お客様が言葉にされない願望やニーズを、先読みしてお答えする事がサービスの心だと、そしてホテル産業ではなくホスピタリティ産業だとも書いてありました。
 私はその本に感銘して実際にサービスを体験しに大阪まで行ってきました。そこではご案内する時から違いました。まず、受付を済ませるとロビーで寛がせてくれます。そして『山口様お待たせ致しました』と名前を呼んで部屋までご案内をして頂き、部屋の説明が終わった後には『何かございませんか?もし何かございましたら声をかけて下さい、ゆっくりお寛ぎ下さい』と挨拶されました。
 すれ違うスタッフの誰もが私に声をかけられ、ルームサービスを頼んだ時などは、部屋に入るときに靴を脱がれます。私の過ごす部屋には土足でははいらない。私の時間をすごく大切にしてくださっている。そんな感じがしました。同じサービス業でもこんなに違うものかと感激いたしました。
 私もお客さまに感動を与えたい。そんな思いになり、気付いた事から始めてみました。
 お客様との会話の中で、『こういうのがあったらいいね。』と言われたら、その意見を取り入れ、メニューにしました。そうする為には何か聞かれたらインターネットで情報を集め、講習の申し込み、そしてお客様として自分でお金を払って実際にサロン体験、その後はスタッフ同士で練習、そしてやっとお客様のアプローチへと辿りつく。サロン主導の先送り型からお客様主導の追いかけ型へ。追いかけても、追いかけても次の課題。でも答えは目の前にありました。
 二代目として両親とも最初は、お互いの主張でぶつかる事も多かったですが、お客様第一主義という事に気付いてからは、自分達にとって、どちらが大事かという事よりも、お客様にとってうちのサロンが必要かということが基準となりました。
 私達やスタッフにも少しづつ変化が現れてきて、お客様の喜ばれる姿や感動して頂いている姿を拝見すると自分達まで幸せになりました。
 四年前に主人の父が還暦を機に、又新たな一歩を踏み出しました。シニア層をターゲットにした、昔ながらのお客様一人一人におもてなしするお店をオープンしたのです。
 それを機に私たち二代目も、男性も女性も来店頂けるユニセックス型のサロンへとリニューアル。そして今年の春、二階に離れが出来ました。
 男性の目を気にせずお顔剃りやエステができ、ネイルがご褒美として楽しめ、ゆっくり時間を過ごせる女性のための専用サロンです。離れが出来た事で、一階は次の目標・男性の為の粋な空間へ。それはすべて、『お客様のあったらいいね』のアイデアから生まれたものでした。
 理容業って髪を切ることだけが仕事だったでしょうか?私達が大事にしてきた気持ちって何だったでしょうか?
 それは私達のおもてなしの心ではなかったでしょうか。
 沢山の答えがお客様の中にあります。それに気付かせて頂き行動している自分達の中にも答えがあります。
 その大事な宝物を一つ一つ拾いながら、元気・やる気・勇気で私達の明日をつくりだしていきましょう。